台風のとき,サーフィンをして死にかけた話

2014年の8月8日 片瀬江ノ島駅の近くの海岸にて,サーフィン中,死にかけた.

サーフィンをやってきた中で最も強烈な想い出.

 

この日は

セットで頭半

鵠沼海岸あたりはすべてクローズアウト

www.t-sticksurf.com

 

ただ,江ノ島のシークレット(?)ポイントと,水族館前の変な岩の積んである部分ではサーファーが何人か遊んでいるような日.

 

 

www.youtube.com

 

こんな感じ.ポイントは違うけど,ここの近くのポイント.

 

この日は,金曜日で,でも大学は夏休みムードな感じで,研究室に人はすくなくて,午後3時くらいに研究を切り上げて,電車でサーフィンに向かう.

 

まだサーフィン始めてから一年弱で,台風が近づいていて波が大きくなっているとどうしても海に行きたくなってしまうような初心者だった.

とくに江ノ島は大きい波がくる事が少ないから,わくわくしながら出かけたのを覚えてる.

 

いつもチェックしている波情報によれば,台風のときだけ割れる江ノ島横のポイントがいいようだ.

動画を見るときれいに割れている.

 

カレントに注意と書いてあるけど,このときはカレントの怖さなんてよくしらなかったし,気をつければ大丈夫だなーとか思いながら片瀬江ノ島に到着.

 

ぺらぺらの薄い板をかついで,海を見に行く.波がめちゃくちゃでかい...

 

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この日,入ったポイント.(google mapより)

 

 下ににょろっとのびているところから海を眺めると,2mくらいの波がばんばん打ち付けてくる.このとき,すごく驚いたのは,岩にぶつかった波の反射波が生じていたことだ.

 

普段は,波ってのは岩にあたると消滅して,反射なんて起こらない.

それだけこの日の波にはパワーがあった.

 

反射した波とふつうの波が重なり合ってでこぼこした海面になってた.すごくきれいだあ,なんてぼーっとしていたら,近くのおっさんが話しかけてきた.

 

おっさん「君,はいるの!?今日は,ビーチからはエントリーできないよ.」

 

ぼく「波すごいっすねー.え,どうやって入るんですか?」

 

おっさん「この岩場から飛び込むんだよ.タイミングみはからって.水面の下も岩だから水面があがったときに飛び込まないと血だらけだよ.あと,すぐ全力でパドルして,岩から離れないと,岩に打ち付けられて血だらけだよ.」

 

こんな説明してもらっている間に大学生くらいの屈強な男が岩から飛び降りて,無事沖に出て行った. 

 

ぼく「う,うっす.あざっ...す.」

(や,やべー,ここまで丁寧に説明されて,エントリーしないわけにはいかない!?

いや,これはチャンスか.せっかくエントリー仕方を教えてくれたんだから挑戦するしかない!!チャンス!)

 

ということで,波のタイミングを見計らって...ダイブ!!!

 

サーフボードと一緒に助走をつけて,海面目指して飛び込む!

 

ちょうど,サーフボードの上に体が全部のるように...うん,ちゃんと体の下にボードがあって,海面ともいい角度!

 

着水!

いてっ!足の親指が何かに当たった.

でもそんなことよりパドルパドル!!

次の波がきたら,岩に打ち付けられて血だらけだ!!

 

今までにない力強いパドル.元水泳部をみせてやる!!!

 

ぐんぐん岩から離れ,ひと呼吸.

 

足がすこし痛むな.

 

あら,血がでている.けっこうだらだらでてる.

ま,仕方ないか!気にしても痛いだけだし!

 

それより波に集中!!!

 

うおー.波がくると体が上下に2mちかく揺さぶられる.まるでジェットコースター.

 

だいたいいつも同じ場所からわれているなあ.とうろちょろしていたら,ローカルのサーファーに怒鳴られる.

 

「ここはポイントブレイクだぞ!!!!あっちにいけ!じゃまだ!!!」

 

こ,こえー.

一番乗りやすいと思われる場所(しかし危険な場所でもある)から遠ざかる.

 

こっからはひたすらサーフィン!

デカ波だけど,崩れる場所が毎回変わるし,なかなかつかめない.

でも一回のればロングライド!

 

2時間くらい夢中で遊ぶ.

 

そうこうするうちに日没間近.

 

18時半くらいかな.あたりはもう暗くなってきて,そろそろあがるかーなんてぼーっとしてたら,なんかすごい勢いで流されている...?

 

あたりを見渡すと小学生くらいの地元のサーファーが必死にパドルしてる.

 

あ,これがカレントか,しかも岩の方に向かうカレントだ.

おれも小学生についていって,カレントから抜けよう.

 

と思うものの,もう疲れていてパドルしてもパドルしても進まない...

小学生はどんどんパドルして,カレントから抜けたようだ.

こっちを不安そうなまなざしで見ていたのを覚えている...笑

 

ここでちょっと考える.

このままパドルがんばり続けて,体力と筋力なくなってしまうと岸に戻れない可能性がある.しかもカレントから抜けてもあたりはもう暗いし,岩は近いけど,岸までは遠い.

 

これは一か八かカレントに流されて岩に近づく,岩の近くで割れる波に乗って,岸までサーフィンして助かろう!

もしそれが無理なら,岩まで近づいてよじのぼろう!

 

ということで,岩沿いのカレントに身を任せがなら,少し体を落ち着けて,体力回復をはかる.

 

どんどん岩が近づき,また沖のほうに向かって流されて行く.

しかしどうも波をつかめない.タイミングよく割れてくれない.

 

それどころか,波に巻かれてぐちゃぐちゃだ.

このままだとやばい.

体力も消耗してきた.(そもそもハードなコンディションで二時間も遊んでたからあまり体力が残っていない.)

 

サーフボードにしがみつきながら,どうするか考えていると,たまたま足にロープが絡まった.

 

たぶん海水浴場のこれいじょう沖にいってはいけませんロープだ.

 

ロープが絡まったとき,これに捕まれば流されないで済む!と直感し,足を絡め続けた.

足の位置にあるロープだからけっこう深い位置にある.

足に絡めながら波をかわしていると,リーシュコードとそのロープが絡んだようだ.

足が固定されて身動きがとれない.

 

あ,これやばい.溺れる.

と想い,もうリーシュコードをすぐにとった.

さようなら,ぼくのボード.

 

リーシュコードは命綱とも呼ばれ,ボードを捨てる事は命を捨てることとも言われるが,今回はロープがあるからこっちを命綱にしようと言う判断だった.

 

ひさしぶりに海面から顔を出し,呼吸.

足でロープを絡めておくのでは心もとないので,腕でがっちりとロープをつかんだ.

 

この時点で,顔は基本的に海面より下に位置することになる.

 

ただ,でかい波がくる直前だけ,ぎりぎり海面に顔がでる.

そのタイミングでしか呼吸できない.

 

海面に顔がでた!呼吸しよう!

と波を見上げるとそこには自分のボードがあり,こっちに突っ込んでくる!

呼吸はあきらめ海面に潜る.

 

...よかった.ボードとの接触は免れた.

 

かなり呼吸が厳しい.

でもそんなに苦しくない.

アドレナリンみたいなものがたくさんでていて,すごい集中力だ.

 

苦しいことを感じるよりも生き残る方法を脳みそが考えている.

 

ロープを腕でつかんでからはとにかく,冷静に波の合間に呼吸を少しだけして,ロープを伝って,岩の方に向かった.このときの握力はかなり強かった.

火事場の馬鹿力だ.

 

ゆっくり確実にロープをたぐり寄せ,ついに岩のところまできた.

 

次はこの岩の積み上げてある場所を登る.

 

しかも定期的に2mの波が打ち寄せ,くだけている場所だ.

 

岩の隙間にはつよい吸い込む流れがあるはずで,そこに吸い込まれて死ぬ人がいることをネットで調べて知っていた.最後の難関だ.

 

ただ,ゴールはもうすぐそこ!希望が見えてきた!これで生きられる!

 

ちょうど弱い波がきている.

このすきに想いっきりロープをたぐり寄せ岩にしがみつく.

後ろを振り返るとまだ波がくるまで2秒ほどはありそうだ.

 

渾身の力を振り絞り岩をつかんでかけのぼr...

 

渾身の力でのぼっているのにぬるぬるで,ふじつぼだらけの岩はとても滑る.

後少しなのに滑り落ちてしまった.手やひざや足が痛い.たぶんさけた.

 

やばい波がくる!

すぐに岩に大の字に成ってしがみついて,波の圧力をかわす.

 

背中にすごいパワーを感じる.手がすべって,岩の間に吸い込まれる.

間一髪で両腕で隙間の端をつかんで,耐えた.

はやくのぼらないとしぬ!

 

後ろを振り返ると次はかなりでかい波だ.

 

滑らないようにゆっくり冷静に手を書ける.

今度は大丈夫だ.

 

一つの岩を駆け上る.助かったかも.

 

もう一つの岩を駆け上る.やった.生き残れた.

 

このときちょうど,どでかい波が岩に打ち付け,ぼくの捨てたボードはその波と一緒に岩に叩き付けられてまっぷたつに折れた.

 

なんともいえない.高揚感の中,サーフボードを拾いに行ったらまた地獄に戻るかもしれないが,ローカルに殺されかねないので,サーフボードを拾って,興奮状態のまま,立ち去った.

 

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これがまっぷたつになったボードだ. 

 

帰りの電車でアドレナリンが切れてくると,足の傷の痛み(最初のエントリーと最後よじ上るときにできた)が襲ってきた.帰る頃にはくつしたも靴も血だらけで,人生で一番出血した. 

 

足もざっくりきっていたので,この事件からサーフィンは半年とちょっと離れることになった.

でも合宿をきっかけにサーフィンに復活!今でもやってる最高の趣味.

もちろんこのとき以来,台風が近づいているときはサーフィンしていない.

 

なんて,書いてて,気づいた事がある.

 

サーフィンは好きだけど,実力以上の波に立ち向かって怪我をして,サーフィンから遠ざかった.でも9ヶ月くらいサーフィンから離れて,怪我も癒え,怪我の理由もしっかり研究して,またサーフィンをしたら,この事件での恐怖心はもうまったくなくなってサーフィンを楽しんでる.

 

研究もこれとまったく同じパターンになれるかも!?

 

修士課程で,自分の実力以上の研究に立ち向かって,精神的に大きく疲労して,研究が嫌になった.(今はここ.)

 

でも!数ヶ月,研究から離れて,そのネガティブな感情が消えて,失敗の理由もしっかり研究して,また研究を再開したら,もうこのネガティブな感情はまったくなくなって研究を楽しめるかもしれない!!!

 

これは!!!?

ありえるのか!!?

 

今でもサーフィンがめちゃくちゃ楽しいし一生続けたい.

研究もめちゃくちゃ楽しいし一生続けたいと思って,打ち込める日がきたらなんてすばらしいのだろう.